口腔内が不衛生になることで、食べカスや歯垢(プラーク)が溜まってしまいます。特に、細菌の塊である歯垢が繁殖することにより、歯茎が歯垢の中の歯周病菌に感染してしまい、炎症を起こす歯周病に罹患するリスクが高くなります。歯周病に罹患してしまい、進行すると、歯根膜や歯槽骨などの歯周組織が破壊されていき、さらに進行することで最終的に歯が抜け落ちてしまいます。歯周病を治療することで歯茎の腫れや出血はなくなりますが、一度減ってしまった歯槽骨は再生しないため、進行した歯周病の治療後の歯がグラグラのままのケースがあります。この歯周病によって破壊された、歯槽骨を含む歯周組織を再生させる歯周組織再生療法の一つに「エムドゲイン」があります。
エムドゲインとは、豚の歯杯組織から抽出した「エナメルマトリックス」というタンパク質を主成分とした薬剤です。歯周病治療の際に塗布することで、破壊された歯の組織が再生するのと同じ環境を作り出すことにより、歯周組織を再生させます。日本では1998年に厚生労働省の認可がおり、2002年に改良版である「エムドゲインゲル」が認可されました。これまでは、歯を支える歯槽骨の再生は難しいと考えられていました。しかし、エムドゲインを使用する歯周組織再生療法によって、歯槽骨の再生が見込めるようになり、インプラントにおいても治療が難しいとされていた症例でも、治療が可能となる場合が増えました。
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エムドゲインの適応可能な症例
エムドゲインによる再生療法は、歯周病の全てのケースで適応となるわけではありません。エムドゲインによる治療が適応となるのは、歯槽骨が垂直に溶けていることと、周囲に骨の壁が残っていることです。このような状態であれば、エムドゲインでの歯槽骨の再生治療をおこなうことは可能ですが、歯槽骨が横(水平)に溶けている場合は、エムドゲインでの治療は適応されません。エムドゲインによる治療をお考えの方は、一度大分県の歯科医院でご自身の歯槽骨の状態を診断して頂くことをお勧めいたします。
エムドゲインのメリット
歯周病によって失ってしまった、歯槽骨や歯根膜などの歯周組織を再生させることで、ブラッシングなどのセルフケアがしやすくなります。適切なセルフケアをおこなうことで、歯垢や歯石が溜まりにくくなるため、歯周病の罹患・進行のリスクを低減できます。また、歯槽骨を再生すると歯茎も盛り上がるので、歯茎が歯根面に密着し、引き締まりの効果が期待できることから、歯周ポケットが改善されるとともに、見た目の問題の改善にも繋がります。
エムドゲインによる再生療法の流れ
エムドゲインによる治療は歯周外科手術が必要となるので、まずは歯周ポケットの深さを測るなどの様々な検査をおこない、エムドゲインが使用できるか確認をします。(歯周ポケットが6mm以上で、X線写真で4mm以上の垂直性欠損が確認できる場合にエムドゲインによる再生療法が使用されます)エムドゲインの使用が可能であれば、局所麻酔を用いて歯茎を切開して歯根を露出させ、歯根表面の歯石を除去してから、エムドゲインを塗布する箇所の汚れを丁寧に取り除きます。血液や唾液が付いていない状態でエムドゲインを塗布し、歯茎を縫合したら手術完了です。手術は約1時間程度で済むので、その日のうちに帰宅することが可能です。抜糸は術後約2週間後におこないます。
術後は手術部位を清潔にして、刺激を与えないことが大切です。そのため、術後しばらくの間は患部に歯ブラシなどを当てないようにして、うがい薬を使用して清掃します。また、喫煙は血行を悪くするので、治癒が遅れるだけでなく治療しにくくなる恐れもあることから、禁煙することをお勧めいたします。さらに傷口を安静にするためにも、硬いものを噛むのは控えた方が良いでしょう。
GTR(組織誘導再生法)
GTRとは、エムドゲイン同様に歯周病などで歯根膜や歯槽骨などの歯周組織が破壊されたなどの場合に、できる限り元に近い状態に再生させる治療法です。歯と歯茎の間をキレイに清掃し、再生させたい歯根膜や歯槽骨などの歯周組織との間に特殊な人工膜(メンブレン)で覆うことで、再生させたい部分とその他の組織細胞を混入させないように分離します。それにより、再生させたい歯根組織の再生が促され、数か月で歯を支えられるような状態になります。なお、人工膜には吸収性のものと非吸収性のものがあり、吸収性のものはそのまま体内に吸収されますが、非吸収性の膜を用いた場合は、膜を除去する手術をおこないます。
まとめ
インプラント治療をおこなう場合に、土台となる歯周組織の状態が悪いことでインプラント治療を受けることができなかった場合でも、エムドゲインなどの歯周組織再生療法により、歯周組織を再生することでインプラント治療を受けることができる可能性があります。歯槽骨が弱っていることが原因で、インプラント治療ができないといわれた方でも、一度大分県の歯科医院でエムドゲインを用いた治療をおこなうことができるか、相談して頂くことをお勧めいたします。