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第2の永久歯と言われる理由
抜けた歯を補う治療法として永久歯を失った場所に人工歯根を埋入することで、本来の歯の機能を取り戻すインプラント治療は、機能性・審美性ともに優れた治療法です。しかし、治療の質やインプラント埋入後の過ごし方によってはその寿命を縮めてしまう恐れがあります。第2の永久歯といわれるインプラントの寿命や、その寿命を最大限に高める方法、長寿命につながる治療設備や技術などについて、詳しくご説明します。
インプラントの平均寿命は?
インプラント治療の始祖であるスウェーデンのペル・イングヴァール・ブローネマルク博士は、1950年代に血液の流れに関する研究を行っていました。そこからチタンと骨が結合するオッセオインテグレーション(骨結合)という現象が発見され、以来、歯科分野でのインプラント治療が始まったのです。
インプラント治療を行って、埋め込まれたインプラント本体の寿命は、平均で約10年~15年といわれています。しかし、この数字はあくまで平均であり、メンテナンスを怠った場合や事故や何らかのトラブルが発生した場合には、1年や2年程度で撤去しなければいけないこともあります。ですが、適切な管理の元しっかりとしたメンテナンスをおこなえば、それだけでインプラント本体の寿命も延び、平均以上の期間で使い続けることが可能と言われています。
インプラントだからと言って甘く見らず自分の歯と思いメンテナンスをおこなうことが大事となってきます。
インプラントの寿命を最大限に延ばす方法
インプラントの手術をおこない問題なく定着した場合、適切なメンテナンスを継続していれば10年以上使用できるといわれています。施術後10年を経過後のインプラント残存率は90%を超えています。
歯周病を予防する
インプラント自体は虫歯になって壊れたりしませんが、一番の大敵は歯周病です。インプラントにも歯周病に似た細菌感染が起こります(インプラント周囲炎)。歯周病菌によってインプラントを支える骨が痩せてしまったり、他の歯が歯周病になることで噛合せのバランスが悪くなりインプラントの寿命を短くしてしまいます。インプラントは天然歯よりも細菌感染に弱いと言えます。天然歯には防御機能がありますが、インプラントにはありません。そのため、天然歯よりも徹底した歯周病予防が必要になるのです。
セルフケアの基本は自然な歯のケアと変わりありません。セルフメンテナンスだけでなく、歯科医院で定期的にメンテナンスを行い、デンタルフロスやプラウトブラシ(先端の細いブラシ)なども使って、小さな隙間にも歯垢をためないことが肝心です。
咬合調整の重要性
インプラントに負担をかけない正しい噛み合わせの調整が、寿命を伸ばすためには必要です。
自然な歯には歯と骨の間に歯根膜という、いわばクッションのような役割をする組織があります。一方、インプラントにはそれがありません。使用しているうちにインプラントに大きな力がかかる噛合せが生じるケースもあります。このアンバランスは虫歯や歯周病のリスクを高め、歯の寿命を縮めてしまいます。定期的に噛合せをチェックすることも大切です。また、就寝中などに歯ぎしりの癖がある方は、マウスピースで負担を軽減する必要があります。それに加えて口の中を清潔に保つことによって、骨吸収・インプラントの脱落を防ぐことができます。
毎日の歯磨きは欠かさずにおこなう
インプラントは通常の被せ物と同じように、根元に汚れがたまりやすい傾向にあります。そのため歯ブラシだけでなく歯間ブラシの使用も必須となりますが、どちらも扱い方には十分注意しなければなりません。
歯ブラシのヘッド(毛の部分)の横幅は、毛束が横3~4列で、縦幅は上の前歯2本分ぐらいの大きさのものを選んでください。ヘッドが大きすぎると、細かな部分や奥歯などに、歯ブラシの毛先を当てることが難しいため磨き残しができやすくなることがあります。毛の硬さは歯茎に何も問題がない場合は、ふつうを選びます。歯茎に痛みや炎症がある場合や磨く力が強くなってしまう場合は、やわらかめを選ぶと良いでしょう。「かため」は力のコントールが難しく歯茎を傷つけやすくなります。歯茎がすり減ることによって覆われているインプラント部分が露出する可能性があります。
また歯ブラシは1か月に1回は交換するようにしましょう。長く使い続けた歯ブラシは細菌が繁殖し不潔になりやすくなります。
タバコはなるべく控える
歯や歯茎に悪影響を及ぼす喫煙は、当然インプラントの寿命にも影響します。喫煙をすると歯茎の血行が悪くなり、免疫力が低下することで歯茎が腫れやすくなります。インプラント周囲炎や歯周病のリスクが高くなり、喫煙をしない方に比べ、インプラントの寿命も短くなります。インプラント治療と同時に禁煙することをおすすめします。