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インプラント治療で考えられるトラブルの症例と原因
インプラント治療箇所周辺の歯茎が腫れる。
インプラントが骨に癒着(固定)して被せ物の治療まで終わった後、ある程度の期間は問題なく噛めている場合でもしばらくするとインプラント治療箇所の周りの歯茎が腫れたり出血する事があります。これはインプラントが癒着(固定)した骨が何らかの原因により部分的に吸収(溶け)してしまう事により歯茎に炎症が起こることが原因です。
施術後の腫れは通常出てきます。感染に対して抵抗力の低い方や風邪などで体力の弱っている方などは腫れが長引く事もありますが特に心配はありません。ただし、歯茎に近い表層部のインプラントが癒着(固定)した骨が吸収(溶け)して、そこが感染することによって起こる場合があります。
多くの症例では噛み合わせの関係でインプラントに不適切な力が掛かった場合に骨の吸収(溶け)が起こることが多いです。最近よく行われるようになっている抜歯した直後にインプラントを埋め込む即時インプラントなどでもこのような状態になる事があります。即時インプラントは歯を抜いた後の骨の治りを予測してインプラントの埋め込みを行いますので、予測が上手くいかないとインプラントの一部に骨の癒着(固定)が起こらない事もあるからです。従来のインプラントは骨の中のインプラントがしっかり骨と癒着(固定)するまで待ってから被せ物などを制作してインプラントに噛み合わせの力を掛けていましたが、いずれの方法でも噛み合わせの調整がうまく行われないと骨の一部がインプラントと癒着(固定)しない場合がありますのでしっかりと歯科医師と相談の上で施術方法を決めましょう。
インプラントが骨に癒着しない(きちんと固定されない)。
インプラント治療の場合は埋め込みを行ってから一定の期間(症状により個人差があります。)が経過して骨に癒着(固定)する事によって本物の歯根と同じように被せ物を支える事が出来るようになります。しかしインプラントが骨に癒着(固定)せずに抜けてしまう場合があります。この手のトラブルはインプラント治療の創成期にはよく見受けられましたが、近年ではインプラント治療の技術進歩により格段に少なくなっています。
インプラントが骨に癒着(固定)しない場合の原因はインプラントを埋める箇所の骨の状態と手術時の衛生状態の問題が多いと言えます。これまでは外科の知識や経験が豊富なインプラント専門医や口腔外科専門医、歯周病専門医が万全の衛生環境の中で施術していたインプラント手術を一般の歯科医師が普通の診療室で行うケースが多くなっている事から技術的な問題もあります。
手術の技量や経験などの差が原因でインプラントが骨に癒着(固定)しないケースが起こる事があります。また、骨の量が少ない場合や密度が低い場合にはインプラントが骨に癒着(固定)しない原因になることがあります。近年ではインプラント自体の技術が向上しておりインプラントが骨に癒着(固定)しない失敗は非常に少なくなっていますが、技術の差は長期の安定性を考えるとインプラントの寿命に影響を及ぼすことがありますので事前にCTスキャンなどで骨の量や密度を確認するなどのきちんと段階を経た施術を行う歯科医を選びましょう。
インプラントが骨を突き抜けてしまう。
ネジが歯茎から出てしまう
上顎(あご)の場合は比較的に骨が薄いのでインプラントが骨を突き抜けてしまい炎症に至ることがあります。上顎(あご)の奥歯の骨はその上に上顎洞(じょうがくどう)と呼ばれる骨の無い空間があり、インプラントを埋め込むときに誤って骨を突き抜けてしまうとインプラントが上顎洞(じょうがくどう)へ入り込んでしまいその後の治療は大きな手術が必要となってしまいます。また、インプラントが骨に癒着(固定)してもインプラントの一部のネジが歯茎から出てしまう事があります。これは多くの場合骨が十分にない箇所にインプラントを埋め込んだ場合や薄い骨の部分にインプラントを埋め込み骨がインプラント手術の影響で吸収(溶け)する事などにより起こります。
上顎(あご)のインプラントが上顎洞(じょうがくどう)に突き抜けてしまうトラブルの多くは施術者の技術的な問題です。事前にCTスキャン検査を行わず、上顎の骨の厚さを立体的に把握しないまま施術を行ってしまった時などによく起こります。また、インプラントのネジが歯茎から出てしまう原因として骨が十分にない部分にインプラントを埋め込んだ場合や薄い骨の部分にインプラントを埋め込み骨がインプラント手術の影響で吸収(溶け)する事などにより起こります。
また、噛み合わせの過度な力が掛かったりした場合も同様です。施術の不手際や即時インプラントの予測の不備などの原因でもインプラント周りの骨が吸収(溶け)してしまいネジが露出してしまう事があります。インプラントのネジが一度歯茎から出てしまうと元に戻すという処置は難しいので完治させるにはインプラントを除去しなければならなくなる可能性が高くなります。歯科医師には事前にCTスキャンなどで上顎の骨の厚さなどを確認してもらい、施術前の説明をしっかりと行ってもらいましょう。
インプラント治療後の痛み、しびれや麻痺など
インプラント治療後には個人差がありますが数時間から5日間ほど痛みが続きます。これは通常起こり得るものであり心配はありません。ただし場合によっては長く続くしびれや麻痺といった症例があります。下顎(あご)の奥歯の骨の下には下歯槽神経(かしそうしんけい)と呼ばれる太い神経が通っており、この神経にインプラントが触れて圧迫したり傷つけてしまうと下顎(あご)の半分が麻痺を起こす場合があります。
インプラント治療後には個人差がありますが数時間から5日間ほど痛みが続きます。これは通常起こり得るものであり心配はありません。ただし下顎(あご)のインプラントが下歯槽神経(かしそうしんけい)に触って麻痺が起こってしまう場合は術者の技術的な問題と言えます。下顎(あご)の神経の位置を立体的に把握せずに施術を行ってしまった時などによく起こりますので、歯科医師には事前にCTスキャンなどで下顎(あご)の神経の位置などを確認してもらい、施術前の説明をしっかりと行ってもらいましょう。
インプラントの被せ物が外れる、上手く噛めない。
埋め込んだインプラント自体には問題がない場合でもその上の被せ物が外れてしまう事があります。1度や2度なら特に問題はありませんが何回も外れる場合には何らかの根本的な問題がある可能性があります。また、一見なんの問題もないように見える場合でも上手く噛めないという事があります。これは多くの場合インプラントの埋め込み位置や全体の噛み合わせの問題により起こります。
インプラントの被せ物が頻繁に外れてしまう場合は土台になるインプラントに多少の問題がある事もありますが、多くは噛み合わせの関係でインプラントの被せ物に過度な力が加わるような位置設計をしている場合に起こります。全体の噛み合わせを考えずにインプラントの被せ物を作ってしまうとバランスの関係からインプラントの被せ物に過度の力が掛かってしまう事があります。
こういう場合には骨の中のインプラントと癒着(固定)部分が吸収(溶け)する事があるのですがそれ以外にインプラントの被せ物が緩んで外れる場合があります。また、うまく噛めない場合の原因の多くはインプラントの埋め込み位置と全体の噛み合わせの問題により起こります。残っている天然の歯とインプラントの歯の噛み合わせの関係を十分検討した上でインプラント治療を行ってもらうようにしましょう。