舌に関する疾患

舌の役割と仕組み

私たちが食べ物を食べたり、飲み物を飲んだりする際に味を感じます。

その味を感じる「味覚」は主に舌で感じているのです。さらに舌は味覚を感じる役割のほかにも、食べ物を飲み込むのを助ける役割をしたり、唾液を分泌させることにより、唾液に含まれる消化酵素が食物と混ざることで消化器官の負担を軽くするという役割も持っています。また、話すことにおいての発音も舌が大きく関係しています。

口を大きくあけて鏡を見ると、舌の表面である舌背がみえます。舌背は舌体と舌根に大きく分けられ、舌背の粘膜にある>の微小な小の総称を舌乳頭といいます。舌乳頭は場所と形状から糸状乳頭、茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭に分けられます。糸状乳頭を除く舌乳頭には味を感じる細胞の集合体である味蕾(みらい)があり、この味蕾は舌だけでなく、軟口蓋や口蓋垂、咽頭にも分布していますが大部分は茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭にあります。味覚の感じ方は、舌の有郭乳頭、葉状乳頭、茸状乳頭にある味蕾の味細胞上端の微絨毛の部分が味物質によって刺激されると、 味神経を介して大脳の味覚中枢に信号が送られることで味を認識します。

また、味の種類は基本、甘味、苦味、酸味、塩味の4つがあり、さらにうま味の混合から5種類あるといわれています。基本の4種の味は舌のどの部分でも感じることができますが、部位により差があります。苦味は舌根、酸味は舌縁、甘味と塩味は舌尖で主に感じられるといわれています。

舌に関する疾患

舌はとてもデリケートなため、少しの刺激でもピリピリとした痛みを伴うことがあります。例えば、虫歯で歯に穴が開いてしまったり、被せものが古くなって破れたり削れたりした場合や、インプラントや入れ歯やなどが合わなくなって舌が磨れたりする場合などの刺激を受けた際、舌は痛みを感じます。その場合、歯科医院での治療を受けることで原因を取り除けば痛みはなくなります。しかし、中にはストレスなどで無意識のうちに舌を噛んだり、こすったりしてしまうことによって痛みが引き起こされる歯科心身症の場合もあります。歯科心身症は神経質な方に多いといわれており、なるべく気にしないように心がけることで改善することもあります。

その他に粘膜の変化が伴う舌の疾患として、口内炎、白板症、紅板症、カンジダ・アルビカンスという真菌によっておこる口腔カンジタ症、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、加齢とともに唾液分泌能が低下したり(女性に多い)、全身疾患の薬剤の副作用やシェーグレン症候群などにより、口腔内の粘膜の乾燥によっておこる口腔乾燥症、ヘルペス性口内炎などの感染症によるウイルス性疾患、舌癌などがあります。

これらの疾患の疑いがある場合は、なるべく早めに専門の医療機関を受診されることをおすすめいたします。

舌痛症

舌も正常で口腔内にも異常が無いのに、口の中の粘膜面に痛みがあることを舌痛症といいます。舌痛症の痛みは、心理的なストレスと大きく関係していることがわかっています。仕事や家庭で不安や不快な出来事などのストレスを感じた際に痛みを引き起こします。心理的要因が舌痛症を誘発しているのです。また、舌痛症の患者さんは口腔内の乾燥を訴えることが多いために、唾液の分泌量も減っていることから、味覚障害を起こしている人も少なくありません。ストレスによって知らないうちに口呼吸をしていたり、唾液の分泌を抑制する薬剤の服用が口腔内の乾燥の原因になっている場合があるのです。さらに口腔内が乾燥すると、舌や歯茎の粘膜が炎症を起こしてしまうため、痛みを感じるようになります。炎症を起こしてしまった粘膜は刺激に敏感になるため、辛いものなどの刺激のある食べ物に対して舌や歯茎が過敏になってしまうため、食事がしづらくなります。また、体内の亜鉛の量が足りなかったり、鉄欠乏性貧血を起こしたり、女性の場合は更年期のホルモンバランスの変化によっても舌痛症を引き起こす要因になることがあります。

舌痛症の治療法としては、まず痛みの主な原因を口腔細菌のバランス、血液検査などの検査をします。口腔細菌のバランスの検査では、健康な状態でも口腔内に存在する常在菌という細菌のバランスが崩れた際に、カンジダと呼ばれる一種のカビがはびこることがあり、これが口の中の粘膜に炎症を起こす原因になるために検査をおこないます。血液検査では貧血や栄養素のスクリーニングをおこないます。舌痛症はストレスと大きく関わっていることから、癌などの疾患ではないとわかっただけで痛みが消失することもあります。そのため、精神安定剤を服用する場合もあります。

舌痛症は、原因が解明されていないため、完全な治療法が存在しません。そのため経験的に症状を軽減させる対処療法が用いられます。痛みを完全に無くすことは難しいため、日常生活の中で痛みとうまく付き合い、さらに痛みを乗り越えていくことで生活の質を上げることが治療の目標ともいえます。

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